鈴木財閥のアイリーンお嬢様


茶店から出て少し歩いたところでチチブデンキの看板が目に入ったのでせっかくだから秋葉原名物おでん缶自動販売機を見てみようか、場合によってはおでん缶を買ってみようかと思い近付いてみると、「まさに」と言うに相応しいフリルのたくさんついた洋服を着た女性というかどんなに大きく見積もっても中学生くらいのお嬢ちゃんが一人でおでん缶を買おうとしていた。秋葉原という土地柄が影響しているので全く不思議な光景に思えなかったが、お嬢ちゃんの小さな手には札束(小さく見積もっても諭吉100人)が握られていて、その札束を紙幣入れに突っ込もうと短い手を伸ばしていたのでこれはいよいよ富豪で世間知らず或いは天然という”萌え”属性を持ったのお嬢ちゃんとのエンカウントだ。「むぅ〜入らないではないか」と、想定していなかったお嬢ちゃんの”わらわ口調”に臆する事無くおでん缶の買い方というか自動販売機の使い方を教えてあげた。というか、お嬢ちゃんは札束しか持っていなかったので僕が買ってあげた。牛すじのやつ。250円。お嬢ちゃんは嬉しそうな顔でおでん缶を開けようとするも案の定開け方を知らなかったので僕が開ける。「そなた役に立つのぅ」と言われたので「家来にしてください」と冗談を言おうと思ったが控えた。こんな世間知らずのお嬢ちゃんが一人で秋葉原に居るという事はワガママなお嬢ちゃんの意向で付き添い(おそらく2人)と共にどういう訳か秋葉原見学をする事になったものの付き添いの目を盗んで・・・というのがデフォだろうと勝手に推測をしていると、期待を裏切る事無く突然後ろから襟をつかまれた。抵抗できないというか抵抗するつもりは毛頭なかったので抵抗せずにいると「アドン(付き添い)、手を放さんか」とお嬢ちゃん。しぶしぶ手を放すアドン。もう一人はサムソン。やっぱり。僕に乱暴(?)をした付き添いに腹を立てたお嬢ちゃんは「本当に役立たずじゃのぉ」と冷たく言い放った後、僕の手をそっと握って「・・・帰るぞ」と言うので手を繋いで一緒に喫茶店へ帰った。レジで12,000円の支払いを済ませて店を出る時に「行ってらっしゃいませ、ご主人様」と言われたので一応「うむ」と言っておいた。鈴木家のお嬢様を日夜相手させて頂いている僕はご主人様ことトール様からお休みを頂いた翌日お屋敷へ戻った際にはお嬢様を大きな愛でもてなして差し上げようといつも思うのだが、今日ばかりは駅へ向かう足どりがとても重い。それとは逆に支払いで軽くなった僕の粗末な財布にため息を吹き入れてみたらたったの1回でパンパンになった。明日もがんばろう。